インタビュー

フィナテキストは、金融をサービスとして再発明する。

2018年3月14日

株式会社Finatext

代表取締役CEO / Co-Founder 林 良太氏

2008年東京大学経済学部卒業、日本人初の現地新卒でドイツ銀行ロンドンに入社。 Electronic Trading System部門を経て、Global Equity部門にてロンドン、ヨーロッパ大陸全域にて機関投資家営業に従事。2013年より国内ヘッジファンド大手のGCIに参画。1年で同社の海外ビジネスを急拡大させた後、2013年株式会社Finatext(フィナテキスト)を創業。

金融系アプリをいくつも開発・運営され、証券会社の許認可を取得したフィンテック・スタートアップとして知られていますね。

2017年3月に大和証券と連携して、フィナテキストの子会社の形で証券会社スマートプラスを設立しました。この度第一種金融商品取引業者の登録を完了しましたが、これはまだまだ第一歩に過ぎません。私たちは、次世代のウェルス・マネジメント・サービスを創る会社を目指しています。「金融をサービスとして再発明する」ことをミッションとしているのです。

「サービスとして」再発明というのは、どういう意味でしょうか。

金融以外の業界と比べると、ユーザーにとって選択肢が少ないのが金融です。たとえば、ファッションでいえば、トンガった高級品も揃う伊勢丹から、定番がリーズナブルなユニクロ、ブランド通販でツケ払いもできるZOZOTOWNまで幅広いですし、airCloset(エアークローゼット)のような月額定額レンタルもあります。一方で金融サービスは、証券に限ってみても、20年ほど前にネット証券が出てはきましたが、トレーディングアプリはどれを見ても同じようなもの。チャートがあって、ニュースがあって・・・と、みんな同じような作りです。

日本では「貯蓄から投資へ」がテーマとなっていますが、なかなか進んでいません。私は、それは多様なサービスがないからだと思っています。投資を始めるきっかけというのは、誰にでも起き得るものです。退職金が入った、身内が亡くなったといったライフイベントにもよりますし、知人が投資でうまくいっているから私も、とか、面白そうだから自分もやってみたいと思ったりするわけです。しかし、そのきっかけをタイムリーに、適切な形で掴んで投資を始めてもらえるだけの良くできたサービスがないのが課題です。

仮想通貨はまさにそういう広がり方でした。知人がスマホをいじっていて「また上がった!」「何それ?」といったやり取りがあちこちで聞かれました。

仮想通貨の広がりは、2017年の一年間で作られた口座数が、FX口座の歴代積算数を超えたほど、爆発的でした。投機的側面が強くて純粋な資産運用とは異なりますが、ゲーム的な要素も人々を惹きつけた一因でしょう。運転免許証などがあればすぐに口座が作れるのでやってみる、といったハードルの低さも後押ししたと思います。

私たちが起こしたいのは、「資産運用の民主化」です。テクノロジーの力を使って、誰もが主役となるような利便性の高いサービスを受けられるような世の中にしたいのです。

金融業は1400年代からビジネスモデルが変わっていません。自動車産業ですら、フォード・モーターの1903年創業から激変しているでしょう? 金融もこれから変わります。サービスの付加価値で選ばれる時代になっていきます。レイ・クロックがハンバーガー作りと売り方をシステム化してマクドナルドを展開したおかげで、安くて美味しいものが早く手に入るようになったのと同じです。サービス内容と提供のされ方で、ユーザーが多くの選択肢を獲得する世界です。

その手始めが、証券会社の設立というわけですね。

金融は、サービス自体は規制もありますが、提供のされ方がみな同じです。システム自体、20年前に作ったものを継ぎ接ぎして使い続けているわけですから。今はAWSを使えば、低コストで迅速にシステムを作り、サービス・インできる時代です。ところが、金融界はメルカリのようなユーザー・エクスペリエンスを提供できていませんし、今のままでは将来も難しいでしょう。

私たちは、2013年の創業以来、株式投資コミュニティの「あすかぶ!」や投信選びの「FUNDECT」、初心者でもFXに入りやすい「かるFX」などのアプリを開発・運営して、投資マーケットにインパクトを与えてきました。しかし、金融機関におけるステップが複雑なため、手間のかかる過程でユーザーが脱落してしまうのです。であれば、自分たちでコントロールできるよう、会社を作ってしまおうと考えたわけです。

まず証券会社からスタートしたのは、私自身にもスタッフにも証券領域の経験があったからです。保険や不動産、銀行にもゆくゆくは進出していきます。英国でも今「チャレンジャー・バンク」といって、モバイルやフィンテックによる新しい形の銀行がいくつも台頭してきています。優れたUI/UXの提供は、私たちも得意とするところですから、勝算は大いにあります。

証券会社としてどのようなサービスを提供するのですか。

株式取引アプリ「STREAM(ストリーム)」をリリースします。このUI/UXの発想は今までとは全く異なるものです。トップ画面を見て頂ければ、これまでのものとは大きく違うことを感じて頂けるでしょう。そして、3ステップくらいで株式購入ができてしまうというハードルの低さです。私たちらしく、コミュニティの力を活用できる仕掛けも備えます。

先行するサービスには、まず知名度で大きく水を開けられています。スタートアップが対抗するには、プロダクト自体が数倍優れたものであって初めて、同じ土俵に乗れます。その点、私たちのアプリは十二分に魅力的なものに仕上がっていると自負しています。

また、これは日本初の従来型株式委託手数料がゼロとなる株取引アプリです。

煩わしい手数料を約定代金にかかわらず、現物取引も信用取引もすべてゼロにすることに踏み切りました。これは非常に意義の大きいことだと考えています。

アプリのリリース後はどのように事業展開していきますか。

もう動きはじめていますが、自分たちで金融業を行うだけでなく、他社が金融サービスを行うためのプラットフォームを提供します。たとえば、ゲーム会社でも旅行会社でも容易に、自分たちのユーザーや顧客に対して証券業を行えることになります。それぞれリーチしやすい利用者層や売りやすい金融商品のタイプがあるでしょうから、さまざまなところから証券取引が発生していき、マーケットの活性化が期待できます。アパレルのように、伊勢丹からairClosetのような幅広い選択肢が生まれてほしいと考えています。

もちろん、私たち自身もスマートプラスのアプリで、高いレベルのサービス提供が行えることを示しながら、プラットフォーム事業にも展開していくつもりです。その相乗効果も狙っていきます。まさに、「証券をサービスとして再発明する」ことになります。

金融という、ある種の聖域でも、スタートアップが十分闘えるということですね。

今のタイミングだから、可能なのです。フィンテックによって金融のあり方が大きく変わろうとしている、そのことで社会がたいへん寛容になっています。B2BでもB2Cでもフィンテックの話題があふれていて、「それなら試してみようか」とユーザーが思ってくれます。ビジネス環境としては最高です。

金融で最も求められるのは、信用力、ブランドですが、この2~3年でそのハードルが格段に下がり、スタートアップにとって、絶好のチャンスなのです。

このチャレンジは、どういった陣容で行っているのですか。

いま70人ほどですが、まだまだ人材が必要です。証券部門には金融業界経験が豊かな50代も複数名いますが、エンジニアは20代からと、全体的には若いですね。グループで、ベトナムにもエンジニアがおり、開発は全て内製しています。株価など金融領域のトラフィックは、1秒間に2万レコードものレベルで、システムが落ちることは絶対に許されない世界です。テクノロジーとしても盤石でなければいけません。

そんな「テック・オブ・ザ・テック」な環境を快感に思うエンジニアには、最高のフィールドでしょう。あえて挑戦的にいえば、ゲームアプリよりも遥かに、社会にインパクトを与えられるサービスを生み出しているのです。まだまだ立ち上げ期ですから、さまざまな方向にもサービス展開が考えられますし、従来の発想に捉われずに私たちならではのサービスやUI/UXを提案し、作り込んでいけます。繰り返しになりますが、証券会社は第一歩で、ゆくゆくは保険や不動産、銀行業もと考えていますから、活躍場面はさらに広がります。

また、フラットな環境であるのも、当社の特長だと思います。かなりテック・ドリブンな会社ですが、CTOは置いていません。職種や階層はなるべく設けたくないのです。組織のイメージは「#(ハッシュタグ)」です。「#その人の得意領域」、「#その人のキャラクター」といった感じで、争いやエゴを生まず、自律的に個人のパワーが引き出される「ティール組織」が望ましいと考えています。

こうしたビジネス環境や風土のおかげか、フィナテキストでは創業以来、誰も辞めていません。サービスを再発明するというのは、どこよりも良いサービスを創ること。金融というもっともチャレンジングな領域で思い切り力を試してみたい人をお待ちしています。

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