インタビュー

ライフイズテックは、「教育×IT」で子どもたちの未来を変える

2015年12月3日

ライフイズテック株式会社

代表取締役CEO 水野 雄介氏

1982年生まれ。慶應義塾大学理工学部物理情報工学科、同大学大学院卒業。大学院在学中に開成高等学校で物理の非常勤講師を2年間勤める。人材系コンサルティング会社を経て、2010年7月、ピスチャー株式会社(現ライフイズテック株式会社)設立。

ライフイズテックの事業について教えてください。

中学生と高校生を対象に、プログラミングやデザインを教えるITの教育を手掛ける会社です。例えばiPhoneのアプリやゲーム、プロジェクションマッピングのようなメディアアートといった、最先端のものを子どもたちが作ります。

パズドラをやっています、LINEを使っていますというだけでなく「消費者から生産者へ」という思いで、デジタルのものづくりを体験し、楽しみながら学んでいく教育を目指しています。

夏休みや春休みに行うキャンプが主な事業です。全国のさまざまな有名大学にご協力いただき、夏休みなどの休日に大学内の教室でワークショップ形式で行います。例えば5日間、東京大学でiPhoneのアプリを作ってみようという感じですね。ご協力いただいている大学は約15大学あり、東京大学、京都大学、大阪大学、九州大学、名古屋大学、慶應義塾大学などです。

この夏のキャンプには約3000人、これまで累計で約1万3000人の中高生がプログラムに参加してくれました。大学生の講師が中高生を教える仕組みで、技術力だけでなく、コミュニケーション力もある大学生が、5、6人の生徒に対し、1人付き教えていきます。大学のキャンパスで行うので、キャンプ中は子どもたちに大学を体感してもらう絶好の機会にもなります。研究室見学や大学教授の講演なども取り入れています。

なぜ中高生向けにIT教育をしようと考えたのですか。

私自身、もともと教師を目指し、教員免許も持っています。大学院生時代に開成高校で物理を教える機会に恵まれまして、中高生が持っている可能性に惹きつけられたのです。中高生の時期は自立していく時期なので、親や先生が上から言ってもなかなか聞いてもらえません。そこを斜めからうまく導いてあげると、ぐっと伸びるのです。

中高生の時期は、物ごとに一番集中でき、集中したときに一番伸びる時期です。ビル・ゲイツもコンピュータやプログラミングを始めたのがこれくらいの年齢ですよね。プログラミングなどのITは、数学の知識と英語が必要なので、早過ぎてもあまりできません。楽しい体験や今好きなものをきっかけに、プログラミングやITの知識、スキル、創造力というものを、中高生の間に楽しく打ち込みながら身に着けられることは、これからあらゆるものがITにつながっていく社会の中で、非常に意義があると考えています。

中二病などとよくいわれますが、逆にいうと一気に集中したときに一番伸びる時期なのです。物ごとに一番集中できるのは中高生時代です。ビル・ゲイツもコンピュータやプログラミングを始めたのがこれくらいの年齢ですよね。

ITというのは、数学の知識と英語が必要なので、あまり早過ぎてもあまりできません。そういう意味では、これからあらゆるものがITにつながっていく中で、プログラミングやITの知識、スキル、創造力というものを、中高生の間に楽しく打ち込みながら身に着けられることは非常に意義があると考えています。

IT以外に、中高生の頃から身に着けておいた方がよいと思うことはありますか。

アントレプレナーシップ(起業家精神)だと思います。これは必ずしも起業しろということではなく、自分で何かを起こせるかということです。

何でも人のせいにするのは良くない。今の時代は、自分でルールが作れる時代です。何か問題が起こって、首相のせいにする暇があるならその問題を解決できる手段を自分で作ればいいという風に考えられるかどうかです。当事者意識を持って実行できる、人を巻き込んで社会を変える実行力を持つ、そういうアントレプレナーシップを中高生の時代に身に着けられるような教育をしたいと考えています。

まだ事業として広めるほどのパワーをかけられていませんが、去年、キッザニアとBe Startupという事業を始めました。「Boys be ambitious」というか、「大志を抱け、スタートアップしよう!」というものをつくってみたかったのです。

私自身がスタートアップをやってみて一番面白いと感じているのは、財務諸表を見るとか事業計画を立てるとか、そのようなことではありません。「世の中にない新しいサービスをつくって人に使ってもらう」ということが、一番の醍醐味です。そこだけを切り取って、アントレプレナーシップを体験してもらいます。新しいものを作る、新しい価値を世の中に創造する、それを自分でもできるのだという体験をしてもらうという意味で、Be Startupというプログラムを始めました。

貝印という刃物メーカーと一緒に、新商品を作ろうという企画をしたのです。中高生25人ぐらいで商品企画を行い、実際に、コスト計算もしてモックアップを作り、最後に経営陣へ商品化の提案をしました。それが今度、本当に商品化されることになっています。こういう取り組みを実験的に手掛けながら、アントレプレナーシップ教育にも進んでいきたいと思います。

海外展開もスタートされているそうですね。今後の成長戦略について教えてください。

会社の今後の成長には、海外展開とオンライン化がカギだと考えています。

既にシンガポールに会社をつくり、キャンプを実施しました。「5カ国500人」というのが私たちの当面の目標です。私たちは夏のキャンプへの集客を一つの大きな目標にしていますが、夏のキャンプに参加する子どもたちを5か国で合計500人にしたいと思っています。シンガポールは教育水準としては決して低くはない国です。そういう国でもなお中高生に対するITの教育というのは、まだ十分とはいえません。

IT教育には2種類あって、「タブレット等のITを活用して教育を行う」というものと、「ITそのもののプロダクトを創る教育をする」というものがあるのですが、後者は特に手付かずです。生産者側に回る教育というのは、ヨーロッパも含めてまだほとんどありません。

そして、オンライン化についてですが、これは「ダイバーシティ」がとても重要だと考えているからです。

違う国の子たちと一緒に学び合ったりすることが大事なのです。スカイプのようなものがもっと発達すれば、日本の子どもたちと一緒に、違う国の子が学び合える空間がオンライン上でもできると思うのです。そのときに大事なのは、「共通の何か」がある中で学び合うということです。その共通点にライフイズテックが立ちたいと考えています。

シンガポールで始めた海外展開は、当面、5か国での立ち上げを目指します。各国で子供たちのコミュニティづくりをやっていきたいと考えています。各地域でコミュニティをつくっていけば、テクノロジーの進化でオンライン上で共に学び合うといった環境が実現できるようになったときに、一気につなげられますから。

そして、私たちは2020年に20万人の子たちがデジタルのものづくりしている世界をつくろうとしています。高校球児が18万9000人いるといわれているので、それを超えようと思っています。そうすれば、マー君やダルビッシュのようなエースも自然にでてくるでしょう。