インタビュー

徹底的にユーザー寄りのサービスを-マネーフォワード

2014年1月28日

株式会社マネーフォワード

代表取締役社長CEO 辻庸介氏

2001年に京都大学農学部生物機能学科を卒業後、ソニーに入社。出資先のマネックス証券に出向し、その後転籍。同社のCEO室を経て、ペンシルバニア大学ウォートン校にてMBA修了。帰国後に復職し、マーケティング部長兼COO補佐。2012年マネーフォワードを設立し現任。201310月ジャフコより5億円を調達。

マネーフォワードの事業について教えてください。

現在、2つのサービスを主にご提供しています。

1つが家計簿・資産管理ツールの『マネーフォワード』。もう1つは、クラウド型会計サービスの『マネーフォワード 確定申告』および『マネーフォワード For BUSINESS(法人会計)』です。

まず、家計簿・資産管理ツールの「マネーフォワード」についてですが、銀行口座、クレジットカード、証券、ポイントカード、年金など、実は皆さんいろいろな形で支出をしたり、資産を持っていたりします。ところが、「今日時点で、資産が全部でいくらあるか」や、「複数のカードで決済しているが、今月は、何にいくら使ったのか」を正確に把握している方は、意外と多くはありません。マネーフォワードはそこに対する解決策を提供しています。

家計簿というと、日々コンビニで買い物をしたら入力、電車に乗ったら入力、といったように、日々の細かな支出管理をイメージされることが多くあります。もちろん、そういったことは全て可能ですが、マネーフォワードの良さは、「放っておいても、続く家計簿」であるということです。

銀行口座や証券口座、クレジットカードなど、オンラインバンキング等のIDとパスワードを登録するだけで、その後は放っておいても、情報がアップデートされ、整理されていきます。たとえば3ヵ月間何もしなくても、定期的にオンラインバンキングなどの情報を取得して情報が新しくなり、情報が整理されていきますので、その時点での入金、支出状況、資産状況などを正確に把握することができるのです。

201212月にウェブ版をリリース、1月にAndroid、3月にiPhone、その後iPadなど立て続けにリリースしましたが、iPhoneAndroidiPadのファイナンス部門で1位を獲得、さらにGoogle2013年上位入賞アプリに、ファイナンスアプリで唯一選ばれるなど、非常に評価を頂いているのはありがたい限りです。

2つめのクラウド型会計サービスの『マネーフォワード 確定申告』および『マネーフォワード For BUSINESS(法人会計)』は、実は家計簿・資産管理ツールのユーザーの方から「こんなに便利な仕組みがあるのだから、確定申告ツールも開発してほしい」という、たくさんのご要望をいただき、サービス開発を決めました。

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GmailやAWSなどクラウドの流れが進む中、依然として会計の世界ではインストール型ソフトが主流を占めています。「Macで使えない」「データをパソコンの中に保存しており、パソコンが壊れた場合データそのものも壊れてしまう」「データの共有が難しい」など数多くの問題を抱えている現状を解決する、新しいクラウド型のサービスを提供したいと考えています。

価格も、『マネーフォワード 確定申告』はフリーミアムモデルで初期費用、基本機能一切無料、プレミアム会員でも月額800円でご利用いただけます。『マネーフォワード For BUSINESS(法人会計)』も、45日無料でお使いいただき、その後も月額1,800円と、コストの面からも経営者をサポートする形で提供しています。

 

高いレベルのセキュリティが要求される領域ですね。

家計簿・資産管理ツールの「マネーフォワード」に関しては、お預かりするのはメールアドレスだけで、お名前も住所も不要ですので、どなたかは特定できないようになっています。銀行や証券会社の情報についても、オンラインのID、パスワードはお預かりしますが、原則送金に必要な暗証番号はお預かりしません。

クレジットカードについても同様で、原則カード番号はお預かりせず、あくまでもオンラインサービスのID、パスワードだけです。個人を特定できず、決済もできないような情報の持ち方をしていますが、お預かりしている情報の取り扱い、セキュリティについては、細心の注意が必要であることは確かです。

基本的には、お預かりしているID、パスワードは暗号化し、会社としてもエンジニアも最大限の注意を払ってシステムを構築し、また運用を徹底しています。私をはじめとして、金融機関出身者、金融システム構築経験者が複数いますので、金融機関と同水準でデータの保護を行っています

どういう経緯でマネーフォワードの事業にたどり着いたのですか。

もともと大学はバイオ専攻だったのですが、学生時代に先輩に誘われて進学塾を起業したことがあり、ビジネスに興味を持つようになって、ソニーに入社しました。経理部で3年ぐらいやったのち、マネックスの松本社長の「本当に個人の役に立つ金融機関を作る」という理念に深く共鳴し、ソニーの出資先だったマネックス証券への出向に応募したのです。

マネックスの松本社長はその当時から注目の起業家で、日本の金融を個人主体のサービスに変えたい、ということを一貫しておっしゃっていていました。今や東証一部上場、日本だけでなくアメリカ、香港、ヨーロッパなど全世界に社員850名以上を抱える素晴らしい会社ですが、当時は社員数40名くらいで、私もCEO室で、社長のパシリのように(笑)、何でもやらせてもらいました。

その後、どっぷりとマネックス証券に浸かることになり、結局ソニーから転籍しました。尊敬する松本社長の元で10年近く働かせてもらえたのは本当に貴重な経験でした。

そのうちビジネスがグローバルになり、経営陣もグローバル人材になってきて、このままではいけないな、今の自分では通用しないな、と思っていたところ、米国に留学をするチャンスがあり、死に物狂いで勉強してペンシルバニア大学ウォートン校に留学しました。ウォートンでMBAを取って帰国した後、マネックス証券に戻ってマーケティングを担当しました。

ネット証券会社を利用する人は日本で約500万人であり、日本の人口1億2千万人と比べると、残念ながらまだまだ一部です。そこで、もっと幅広い層に向けて、お金に関するサービスを提供できないかと考えるようになりました。食べログとか、クックパッドのように、多くの人々の日々の生活に浸透して役に立つ、ユーザーサイドのサービスが「お金」に関する世界でもあるべきだと思い始めたのです。

誰にでも必要性があって、誰にでも使えて、そして役に立つ。そんな切り口でいくつかのアイデアを検討した結果、マネーフォワードの原型にたどり着きました。当時マネックスをやめることは考えてもいなかったので、社内でなんとかできないかと考えていました。 

今後の展開はどうお考えですか?

まずこの分野で圧倒的なNo.1の地位を築きたいと思います。プロダクト、サービスレベルとしては現段階で日本No.1といっていただけることもありますが、自分としてはまだまだこれからだと思いますので、サービスレベルを向上させつつ、ユーザー数も200万人まで増やしていく計画です。

また、次の一歩としてローンチしたのは、「マネーフォワードFor BUSINESS」です。これまで煩雑だった個人事業主の方の確定申告や、法人の経営情報の把握のために開発したサービスです。面倒な手作業をなるべく削減し、本来の付加価値の高い作業に集中していただけるようなサービス作りを目指しています。

例えば、銀行残高など、登録した情報を同期してアップデートされ、自動的に仕訳もなされるというものです。請求書を登録しておけば、未入金の場合アラートが出るといった機能も備えています。

個人の家計簿と資産管理で築いたベースを活かして、広いB2B市場に出ていける可能性を考えると、今後の展開が非常に楽しみです。

現在、日本にはネット証券のユーザーが約500万人、オンラインバンキングのユーザーが約4,000万人いるといわれています。ネットを使っていて、資産管理の意識があって、クラウドで金融サービスを受ける可能性がある層だといえます。米国には、Personal Financial Management(PFM)という分野が確立しており、Mintという最大手が1,200万人のユーザーを抱えています。米国は個人が確定申告を行うので市場が大きいとしても、その3分の1の規模くらいは日本でも獲得できるのではないかと考えています。

それに、マネーフォワード自身は金融商品を販売しないので、あくまでもユーザーサイドに立った、中立的なプラットフォーマーでいたいと考えています。ユーザーは家計や資産を管理できる機能に加え、役立つ「情報」を求めていることもわかってきました。これに応えるべく、「お金に関する正しい知識やお得な情報」を発信するウェブメディア『マネトク!』を新たにリリースしており、これも新たな展開のひとつとなっています。

日本の「お金に対するリテラシー」は低いといわれています。この点に意義がありそうですね。

そこはまさに私たちの社会的意義だと思います。マネーフォワードという名前は、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」という意味なのですが、お金の使い方というのは、人生と深くつながっていると思うのです。個人のお金に関するリテラシーが高くなると、人の生活も良くなるはずです。

それには、ユーザーサイドに役に立つサービス、ユーザーの生活に密着したサービスを作っていくことが一番早いのではないかと考えています。マネーフォワードというサービスはあくまでもその第一歩ですが、この先にあるのは、個人がお金に関する知識を身につけ、正しい認識を持ち、生活を、そして人生をより良くしていくことです。我々のサービスを通じて、実際にはマネーフォワードでお金を管理することで気づいてもらったり、自分と同じような人がいかにお金に関してうまくやっているかという事例や情報を得られるようにしたりすることで、具体的に貢献したいと思っています。

ビジョンを実現するために、どんな人たちと一緒に働きたいですか。

エンジニアを中心として、優秀でサービスづくりを一緒に楽しめる人、ユーザーメリットを一番に考えることができるメンバーと働きたいですね。

先日、私たちはジャフコ様から5億円の出資を受けましたが、サービスを磨き上げていくための人材採用と、マーケティングに活かしていく予定です。私たちはあくまでもサービスづくりが中心の、インターネット、アプリケーションをベースとしたスタートアップですので、とにかくユーザーをあっと言わせる、ユーザーの本当に役に立つサービスを構築できる、優秀なエンジニアが命です。扱う分野も、金融領域であり、セキュリティも含めて極めて高い技術レベルが求められますし、レコメンデーションなど新たな分野の挑戦もあります。

フレームワークはRuby on Railsで、iOSやAndroidアプリの開発もありますし、アカウントアグリゲーションはJavaで構築しています。特に、Railsやスマホが得意なエンジニアの方にはぜひぜひお会いしたいです!

経験豊富で、修羅場をくぐってきた、サービス作りの本質的な価値を追求するエンジニアばかりですから、やはりいい仲間と仕事ができるというのはひとつのアピールポイントかと思います。何をやるかも勿論大事ですが、ひょっとするとそれ以上に「誰とやるか」も大事なポイントと思っています。

今後は、エンジニアがアイデア出しから、サービスを作りあげるところまで一貫してできる環境に、さらにみがきをかけていくつもりです。やりがいとしては、世の中に本当に必要とされている、日々の生活に密着した、新しいサービスを作れるということでしょうか。大規模な組織だと、サービスを企画する人と作る人が別だったり、社内受注のような形になることが良くありますが、マネーフォワードではそのようなことはあり得ません。

自分がいいと思ったものを試してみて、ユーザーに使ってもらって判断し、さらにブラッシュアップしていくというサイクルを自ら、早く回せるのが強みかと思います。デザイナーの方にも同様の面白さを感じていただけるかと思います。DAUも非常に多いサービスで、人の生活に密着したサービスですので、本当に面白いのではないかと思うのです。

最後にメッセージをお願いします。

お金の出入りというのは、趣味の領域とは違って、例外なく全員にかかわることです。そこで、最も裾野が広くとれて、日常に入り込みやすい家計簿・資産管理というサービスから着手し、早々に多くのユーザーを獲得することができました。かつ、非常にアクティブに使われていて、すごい勢いでユーザーベースとノウハウが蓄積されています。

さらに、「マネーフォワード For BUSINESS」をリリースし、B2Bの領域にもイノベーションを起こしたいと考えています。エンジニアも、デザイナーも、事業系の方も、人の役に立つサービス、人の日常にかかわるサービスを手掛けることへのやりがいを感じてもらえる方には、最高の舞台ではないかと思っています。

私はインターネットがもつfair(公平さ), open(オープン), free(自由)の概念が大好きで、そのインターネットの良さを存分に生かしたサービス作りを進めていきたいと思っています。自分たちでいうのもなんですが(笑)、いい仲間が集まっていますので、興味を持っていただいたらぜひ、ざっくばらんにお話ができればと思います。

マネーフォワードにご興味をお持ちの方へ