インタビュー

Speeeの事業はビジネスデベロップメントそのもの

2015年5月12日

株式会社Speee

代表取締役 大塚英樹氏

1985年生まれ。埼玉県出身。
大学在学中からビジネスの世界へ飛び込み、大手人材系企業や複数のベンチャー企業を経て2007年、Speeeを創業。

Speeeの事業について教えてください。

私たちの事業はBizDev(ビジネスデベロップメント)そのものです。複数の事業を生み出す「事業創造プラットフォーム」であることを会社の中心に据えており、社員数は現在300名です。
現時点では、以下の3つが事業の柱となっています。

  1. Webマーケティング事業
    SEOコンサルティングや広告配信プラットフォームの運用を行うトレーディングデスク事業など、企業のWebマーケティングを支援するB2B事業です。対前年比で、約130%の成長をしています。

  2. インターネットメディア事業
    こちらはB2C事業で、個人が持っているマンション・家・土地といった不動産について、優良な不動産会社から一括で査定を受けられるサイト「イエウール」など、複数のインターネットメディアを運営しています。こちらは対前年比約300%の成長率です。

  3. 新規事業
    上記以外に複数の事業を生み出していますが、現在は医療領域にも大きな可能性を感じ取っており、グループ会社を設立して事業をスタートしています。医療以外にも海外事業など、複数の可能性を見ています。

どういう視点でデベロップするビジネスを探しているのですか?

時代の流れに沿った「大きなテーマ」「大きな課題」に取り組みたいとずっと考えていました。ベンチャーの使命は、「既存の産業を活性化させる」か、「新しい産業を作る」か、だと思っています。

私は「2030年はこうなる」といった未来予測系の本を昔からよく読むのですが、残念ながら結構外れるものもあります(笑)。そんな中でもほぼ固く読めるのが、人口予測だと言われています。

先進国が直面し、今後、新興国で問題になっていくのはどういうものか、といったことは、調べて考えていくと、だいたいわかるという類の話です。例えばこのような「大きな流れに沿った課題」かどうかは、Speeeで取り組みたいビジネスの1つの判断基準ですね。

具体的にはどのような事業がスタートしているのでしょうか?

「IT×医療」で徹底的に調べて、既にあるサービスを使い倒そうと思い、調査を開始しました。その結果、大小併せて、570個もプロダクトが出てきたのです。それを全部使ってみて、収益モデルやユーザーを徹底的に検討しました。そうすると、ビジネスとして成立しているものは片手で数えられるくらいしかないことが分かりました。それらは本当にみんなが知っているもので、新発見という意味では、ほぼサプライズはありませんでした。

ここで生まれた仮説が、「オンライン側からのアプローチだけでは今起こせる変化に限界があるのではないか?」というものです。

風邪を引いた時皆さんはどうされますか?栄養をとって寝たり、ドラッグストアで薬を買ったり、町のお医者さんに診てもらうか、などだと思います。その中でも町のお医者さんに行くケースは多いと思いますが、町のお医者さんにはまだまだ効率化されていない部分が多く、且つユーザー(患者)にとっても適切なサービスとは言い難い部分があります。

ちなみに、経済産業省はコンビニエンスストアを生活に不可欠な「社会インフラ」であると言及しています。コンビニエンスストアは全国に5万件以上ありますが、診療所の数はそれを超える9万施設以上です。これも同様に、社会インフラであると言えるでしょう。

優秀なドクターがいる事を大前提としたうえで、診療所を維持する経営状態のためには立地が非常に重要であり、加えて、一定のサービスを提供していれば来院数が増えやすい傾向にあると言われています。そのため、サービスの質や生産性を高めるインセンティブが上がりにくいという構造があります。

また、現場のドクターから話を伺うと「診療所経営を担うドクターの多くが、まだITリテラシーが高いとは言い難いのが現状」という話を耳にします。実際にクリニックに通われる患者さんの年齢層を見ても、「スマホで予約できるようにしましょう」という話がなかなか前に進まないのも頷けるなぁと思っています。従って、従来の診療所内の業務オペレーションでは、ITソリューションが入る事による生産性や質の向上を阻害してしまい、所謂「2025年問題」への準備が不足していると感じました。

これはまさに、大きな課題だと思っています。私たちはこの課題に対して、オンラインだけで解決しようとせず、オフラインも絡めてアプローチすることにしました。もちろん、Web出自の私たちが業界の構造をすぐに変えられるとは思っていません。まずは小さく検証をしながら、知見を貯めていく必要があると思っています。私たちは現在、都内の診療所をモデルケースに、我々のビジョンに共感をしてくれたドクターたちとともに、新たな診療所経営の在り方を実証しはじめています。

まだまだ多くの課題がありますが、この試みはグループ会社を通じて、少しずつ拡大をさせていく事が理想です。そして、この構想のもう1つの柱は次世代型電子カルテ・EHRです。構想の段階なので、詳細は控えますが、次世代型EHRの普及を通じて、厚生労働省や各自治体が推進に力を入れている「地域包括ケアシステム」の構築をITの面から強力に支援し、地域医療連携やプライマリ・ケアが実現されるべきである、という仮説を持っています。

医療現場にITを掛け合わせることによる「オフラインtoオンライン」というような取り組みも、積極的に行っていくつもりです。我々が考えるBizDevの根底には「大胆な仮説を立て」「大きな課題」に取り組みたいという想いがベースにあります。

海外事業もビジネスデベロップメントの一環ですか。

ASEAN諸国でプロダクトを幾つかローンチしています。海外は、始める前に現地の起業家と何人もお会いしました。そして、現地に根差したビジネス展開で成功することがいかに難しいか、成功例がいかに少ないかを強く感じました。

そこでまずは、リアルな現地のインターネットユーザー動向を知りたいと思い、ECなどライフスタイルに密着した領域で複数のメディアを立ち上げ、ユーザーの検索動向を把握することにしたのです。

これが非常にうまくいきまして、今では、インドネシアで月間100万近いユーザーが使うメディアになりました。社内のインドネシア人と一緒にプロダクトを作っていますが、現地にはまだ1回しか行ったことがありません。それでも、検索データを見ると現地のインターネットユーザーの動向が日本と全く違うということが、手に取るようにわかってきます。

例えば、現地ではWebメディアの信頼性が低く、「確実に購買アクションが取ることができる」メディアを探すための検索キーワードが入力されています。そういうのは、実際の検索行動にリーチ出来ないとわからないですよね。また、「いいね」を押してくれているユーザーと直接コンタクトを取り、ユーザーの声を聞かせてもらいながらプロダクトにフィードバックもしています。

結局このような現地情報の収集と、そのデータを見ながら、大胆な仮説を立て、実験をくり返し、コンセプトを作り、そして、BizDevをするというアプローチを開始しています。

今後、どのように成長していきますか。

いわゆるメガベンチャーを目指したいと思っています。

現在は社員も数百人いて、ミドルベンチャーというか、アーリーとはいえない規模ですので、次の段階に進みたいと思っています。日本にはIT出自の大企業がもっとあっていいと思うのですが、実際はグローバル規模でのメガベンチャーは、非常に少ないと思います。

メガベンチャーへの道は極めて険しいですが、行くときは、「一点突破」だと思っています。時間がかかっても、一つの事業が一点突破することで、桁を大きく変えているのであって、複数の事業を全部伸ばしてメガベンチャーになった会社は、日本のIT産業史上ありません。

ただし、一点突破する事業の種を「発見する」には、事業のポートフォリオが必要です。その中で人材が流動し、成長していくことを考えると、育成の観点からもポートフォリオが必要です。もちろん、例えばクックパッドさんのように、最初のプロダクトが圧倒的に素晴らしく成長を実現した企業もありますが、私たちはそうではないので、今はポートフォリオで考えます。そして、自分たちは、「挑戦的弱者」という自覚を持ち、「なるべくして」メガベンチャーになっていきたいと思っています。

Speeeが勝てると考える根拠は、何でしょうか。

大きく3つあります。

1.B2B事業とB2C事業を両方持っている

これは、かなり重要なことだと思っています。イノベーションの種が、B2B事業から出てくるか、B2C事業から出てくるかはわかりません。したがって、どちらの波でも捉えられるようにしておくことが有効ではないかと考えています。

先ほどお話したように、大きく事業の桁を上げるなら、一点突破なのです。複数の事業をどれだけパラレルにやっても、大きく伸びるときは、たったひとつ。だとすれば、B2BとB2Cの両方を持っていることで、その一点突破のチャンスを掴める確率が高くなると考えています。

2.自己資本でやっている

私たちはベンチャーキャピタルや他の事業会社といった外部資本が、現時点で入っていません。戦略の自由度はそれなりに高く、今まで多くの失敗がありましたが、糧に変え、事業は継続的に成長してきました。一定の投資余力もあり、社員も300名いますので、チャレンジできる要素は十分にあります。国内において、自己資本だけで拡大しているベンチャーは意外と多くはないので、この点はユニークだと言えるのではないでしょうか。

 

3.マーケティングに強い

私たちが自前でやってこられたのは、マーケティング力が強いことが大いに関係していると思います。斜め上をいくような奇抜なアイディアでヒットする事業も世の中にはあるとは思いますが、再現性が乏しく、今の我々にはあわないアプローチだと考えています。ですから徹底的にマーケティングをして、情報を収集して、整理して、考察して、妄想したうえで意思決定をするのです。確率を極力高めたうえで、新しい領域に取り組みます。

セブンイレブンの鈴木さんが何かのインタビューで、「イノベーションを生み出そうなんて考えてなかった。ただ、POSシステムのデータを中心に、消費者動向を見ながら仮説と検証をくり返し続けた」という主旨のことを仰ってましたが、私はこの話が非常に好きです。データしか見ないとつまらないものしかできないかというと、そうではないと考えています。データから世の中のトレンドや大胆な仮説を見出すのは、イノベーターの力量で決まると思うのです。その確率を上げるためにも自分たちがどのようなローデータを収集することができるか、そして、そこに考察と妄想を重ねて、大胆な仮説を構築し、コンセプトを作り挑戦をしていくのが私たちのスタイルだと思っています。

ビジネスデベロップメントで活躍できるのはどういう人ですか

一言でいうと、「ゼネラリストとしての視座と、マーケティングへのセンス」ではないでしょうか。この二軸を持つ人は、BizDevでかなり活躍できると思います。

Speeeが事業をつくるときは、国内も海外も含めて情報収集をしたうえで、整理して、考察して、妄想して、戦略を立てて実行をしていきます。このプロセスの中で、最初だけ活躍する人もいますし、途中で活躍し始める人もいますし、後半で活躍する人もいます。全ての新規事業をこのプロセスで作っていくので、漠然と「俺は新規事業が得意だ!」という人は、このデータにふれやすくなった時代においては少し古いかもしれません。

データの収集と分析で、構造に迫って勝率を上げていくので、得意分野の細分化が始まっています。よって、自分の強みを具体的に理解したうえで、それを活かしながら拡げていくタイプの人が向いているのではないでしょうか。

あと、最後は想いですね。イノベーションすらプロセスによって起こそうとしている私たちが想いを重視するのは、「やっているプロセスに納得感を持ち、これ以上の調査と思考をしたことがないというところまでやりきらないと」、最後に気が散ってしまうからです。新規事業というものは、ものすごくエキサイティングですが、ものすごく不安なものです。その中でも、実行にこだわる事ができるのは、仮説が、「想い」にまで昇華された状態が、最後の最後でものをいうと考えています。

現状のSpeeeは、私たちが目指しているものに対して、あまりにも未完成な状態です。私たちにあるのは、独自のプロセスと、イノベーションへの強い想いです。今はBizDevをくり返し、社会の課題解決に大きく貢献できる、価値ある事業を創りださねばなりません。BizDev集団として、この想いに強く共感していただける人と組みたいと、常に思っています。

Speeeでは、今後の更なる成長に向けて積極的に採用を行っています。 ご興味をお持ちの方はこちらからご連絡ください。